コラム

シニア世代が紡ぐ「生き方」のマーケティング

2025.06.26
シニアマーケティング

本格的な夏の始まりを告げる夏至を迎え、2025年も折り返し地点に入りました。今年は例年よりも梅雨の期間が短く、早くも盛夏の訪れが予想されています。農業への影響も懸念される中、私たちの“食の原点”である「お米」にも大きな変化が起きています。さらに今年は、終戦から80年という節目の年でもあります。戦後の復興を支え、暮らしや産業の礎を築いてきた世代が、人生の集大成を迎える時代です。そこで今日は、あるシニアの挑戦をご紹介します。「年齢を理由に諦めず、今だからこそできることを」と歩む姿は、世代を超えて共感を呼び、「生き方」を伝えるマーケティングのヒントにもなっています。

高騰する米と見えにくい構造の問題

 

去年から家計を悩ませているのが、米の価格高騰ですよね。「令和の米騒動」とも呼ばれ、現在5kg約4,200円と、わずか2年前の約2倍という異常な値上がりです。パンの消費が増えたとはいえ、日本人にとって米は、食の基盤であり続けています。この背景には、気候変動による不作や農業の担い手不足といった直接的な問題に加え、備蓄米の複雑な制度設計、在庫管理の課題、そして硬直的な価格決定メカニズムが挙げられています。これらの問題は「米業界の闇」とも言える根深さを感じさせ、部外者には見通しにくい構造となっています。生産コストの高騰と生産者の減少を考えれば、これまでの安すぎる米価が是正され、適正価格に近づいているという見方もできます。しかし、消費者にとっては大きな負担です。生産者と消費者が共に納得できる持続可能な価格水準を実現することにあります。そして日本の食の基盤を守るための、より透明性の高い制度設計が求められています。

米じい「77歳人生最後の米作り」

 

そんな中、山形県で60年間米作りを続けてきた77歳の農家、通称「米じい」が注目を集めています。体力の衰えを感じ、2025年を“人生最後の米作り”と決意した彼の姿に、多くの人が心を動かされています。「農業を継ぐ」と名乗りを上げた孫、「思い出として形に残そう」と、もう一人の孫が提案したのは“SNSで発信する”という挑戦。ガラケー世代の米じいにとっては、未知の世界。「自分には難しい」と言いながらも、孫の協力で一歩を踏み出し、人生を記録する決断をします。「難しくて恥ずかしい」と自認しつつも、カンペを読みながら登場する動画は、逆に多くの共感を呼び、フォロワー数は、なんと17.9万人超。Instagramで、「米じい」と検索してみてください。米じいが届ける米は、「60年の想いが詰まった人生の集大成」です。その予約販売は、現時点で既に完売しているようです。

SNSがつなぐ「世代と共感」の架け橋

 

米じいの挑戦は、単なる「IT導入」ではなくて、「言葉では語りきれなかった情熱を、デジタルの力で次世代へ伝える姿」の象徴です。孫がSNSを運営し、米じいは語る。この世代を超えた共創によって物語が紡がれ、発信されています。一方、デジタルネイティブの若い世代も、米じいのような真摯な営みに出会ったとき、「リアルな人間らしさ」に胸を打たれるのではないでしょうか。モノづくりは孤独な営みですが、その込められた想いを誰かが代弁し、伝えることで、感情のバトンは次の世代へと渡されていきます。この共感の循環こそが、シニア世代の豊かな経験や情熱を未来へとつなぐ大切な架け橋となります。ここにはマーケティングにおいて重要なヒントがあります。時代遅れに思えることでも、現代のツールと手を組むことで、むしろ「新しさ」や「リアルな感情」として受け手の心に響くのです。

ストーリーは「姿勢」から生まれる

 

「モノを売るな、ストーリーを売れ」とよく言われますが、米じいの事例は、単に“ストーリー仕立て”にすれば売れるという話ではないことがよくわかります。米じいはSNS発信以前から60年間、誠実に米作りに向き合い、天候と闘い、家族を守り、米を届け続けてきました。その日々の積み重ね自体が、すでに心揺さぶる物語だったのです。体力の限界を感じながらも「最後までやりきる」という米じいの姿勢こそが、まさしく“ストーリー”そのもの。これは売るための演出ではなく、「誰が、何のために、どう向き合っているか」という信念からにじみ出る本質が、人の心を動かします。マーケティングにおいて、ストーリーの主役は「人」です。価格や機能だけでなく、「どんな人が、どんな想いで生み出したか」を伝えることで、購買理由は共感へと変わります。米じいの言葉に込められた損得を超えた「命の時間の価値」は、応援したくなり、買いたくなる衝動を刺激します。この心理こそ、現代のシニアマーケティングに必要な視点ではないでしょうか。

まとめ

 

「挑戦したいことに、命あるうちに行動を起こす」。米じいの姿は、私たちに力強いメッセージを伝えてくれます。シニアマーケティングの現場でも、「人生の集大成を伝えたい」「誰かの心に残る時間を届けたい」という想いが、共感を呼ぶ原動力になります。つくり手の世代交代が進む中で、「生き方が伝わるモノづくり」に、より強く惹かれるようになってきました。私たちは今、消費者でもあり、語り手でもあります。だからこそ、“モノをしっかりつくる”という誠実な営みに光を当て、それを未来へと手渡していく視点を、忘れずにいたいものです。シニア市場のビジネスを「もっと詳しく知りたい!」 という方は、どうぞお気軽にお問い合わせください。

 

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この記事を書いた人

神開 隆一(じんがい たかかず)

有限会社ティー・エム・シー代表取締役。2002年の創業以来、20年以上にわたりシニアマーケティング領域で100社以上の通販企業を支援。紙媒体の信頼性と継続性を活かし、デジタル施策と融合させた広告戦略を構築する実践派マーケター。

著書:『紙から始めるシニアマーケティング』
企業プロフィール:神開 隆一(公式)
X:@t_jingai

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