コラム

冬季五輪2026が映し出した「時間の価値」

2026.02.26
シニアマーケティング

2026年に開催されたミラノ・コルティナ2026冬季オリンピックは、多くの感動と示唆を残して幕を閉じました。日本は金5・銀7・銅12、合計24個と冬季史上最多のメダルを獲得。しかし、私たちの心を打ったのは数字以上に「時間」が生み出した物語ではなかったでしょうか。

ショート5位からの大逆転で世界歴代最高得点を叩き出した“りくりゅう”ペア。スノーボード勢の躍進。勝敗を超えて称え合うスポーツマンシップ。そして開会式で五輪旗を掲げた前広島市長・秋葉忠利氏(83歳)の姿。
そこに共通していたのは、積み重ねられた時間の重みでした。

本稿では、五輪が映し出した「時間の価値」を、シニアマーケティングの視点から読み解きます。

継承:24個のメダルが示す「中長期戦略」

史上最多24個の背景

日本の24メダルは偶然ではありません。近年、スポーツ庁は競技力向上事業として、海外遠征や強化合宿、指導者育成などに年間100億円規模の予算を投じてきました。成果は一夜にして生まれるものではありません。

中長期の投資は、すぐに「結果」として可視化されなくても、「土壌」として蓄積されます。人材育成、データ分析、練習環境整備。これらが連鎖し、数年後に花開く。

マーケティングにおいても同様です。単発キャンペーンは瞬間風速を生みますが、ブランド資産は蓄積型。時間を味方にする戦略こそ、再現性の高い成果を生みます。

人・環境・努力の三位一体

優れたコーチとの出会い、通年で使える練習環境、そして圧倒的な練習量。この三位一体が競技力を支えました。草の根レベルでの裾野拡大も忘れてはなりません。

これは「接触回数の法則」にも通じます。行動経済学では、人は繰り返し接触する対象に好意を抱きやすいとされます。シニア市場においても、継続的な関係設計がロイヤルティを生みます。

短期の刈り取りではなく、長期の伴走設計。祖父母と孫が共有する体験、学びの継続、健康投資。こうした“時間の掛け算”が、やがて信頼へと転換されます。

平和:五輪旗が可視化する「安心の価値」

オリンピック・ムーブメントの象徴

2026年ミラノ・コルティナ冬季オリンピックは、単なる競技大会ではありません。スポーツを通じて相互理解を深める運動です。

開会式で五輪旗を掲げた秋葉忠利氏の姿は、「平和」という理念を象徴していました。83歳という年齢が、時代の重みを語ります。戦争や震災、パンデミックを経験してきた世代にとって、平和は抽象概念ではなく、体験に裏打ちされた現実です。

シニア世代が重視する安心

価格よりも信頼。機能よりも誠実さ。
シニア層は、企業姿勢や社会的メッセージに敏感です。

CSR(企業の社会的責任)や地域連携、透明性のある情報開示は、「安心の可視化」に直結します。倫理観を持つブランドは、長期的な支持を得やすい。

五輪が“平和の祭典”と呼ばれるのは、単なるスローガンではありません。それは、信頼の土台を示す象徴的な装置なのです。

感動:数字で裏づける「共感経済」

物語が市場を動かす

りくりゅうの逆転劇。若手スノーボーダーの挑戦。
感動は情緒的な出来事にとどまりません。

行動経済学では、人は合理的な計算だけでなく感情によって意思決定を行うとされます。共感は、購買行動を後押しする“心理的エネルギー”です。

物語は記憶に残ります。そして記憶は選好を形成します。ブランドが機能スペックだけで語られる時代は終わりました。

メディア接触と消費波及

総務省の調査によれば、60代以上のテレビ視聴時間は1日約4時間前後。シニア層はテレビ接触が高く、スポーツ中継の到達力は依然として強い。

五輪の感動は家庭内で共有され、会話を生み、消費行動へと波及します。
これは「共感経済」と呼ばれる現象です。感情が経済を動かす構造。

スペックより物語。データより背景。
人生文脈に寄り添う発信が、ブランド選好を形成します。

絆:旅前接点が生む「選ばれる設計」

旅行計画は予約サイトから始まる

楽天インサイトの調査(2025年)によると、国内旅行の情報収集源として旅行予約サイトが28.4%で最多でした。

行き先を決めた後、周辺イベントを検索し、旅程へ組み込む行動が一般的です。つまり、勝負は「現地」ではなく「旅前」に始まっています。

“見つかる状態”の設計

イベントは直前告知では遅い。
計画段階で検索にヒットする設計が必要です。

開催日程の早期公開、検索エンジン対策、観光連携、体験を伝える写真や動画。これらは“偶然の発見”ではなく“設計された発見”を生みます。

シニア×三世代旅行の可能性

3月は春休み。三世代旅行が増える時期です。
祖父母と孫が同じ感動を共有できる体験は、価格競争を超えた価値になります。

五輪という共通話題は、世代間の会話を生みます。
語れる体験、持ち帰れる記憶。それこそが“時間価値型”商品の本質です。

まとめ:時間は最大のブランド資産

冬季五輪2026は、24個のメダル以上のものを示しました。それは「時間の価値」です。

中長期投資が実を結ぶ継承。
五輪旗が象徴する平和。
物語が生む感動。
共有体験が育む絆。

日本の高齢化率は約29%。超高齢社会において、アクセシビリティやユニバーサルデザインは配慮ではなく戦略です。続くパラリンピックは、多様性と共生という視点をさらに深めます。

オリンピックとパラリンピックは、社会の縮図。
そこに映るのは、時間をどう使うかという問いです。

短期の話題で終わらせるのか。
中長期戦略として取り込むのか。

冬季史上最多の成果が教えてくれたのは、「結果は時間の先にある」という事実。
五輪は閉幕しても、時間の物語は続きます。

未来は、時間を味方につけたブランドにこそ微笑むのです。

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この記事を書いた人

神開 隆一(じんがい たかかず)

有限会社ティー・エム・シー代表取締役。2002年の創業以来、20年以上にわたりシニアマーケティング領域で100社以上の通販企業を支援。紙媒体の信頼性と継続性を活かし、デジタル施策と融合させた広告戦略を構築する実践派マーケター。

著書:『紙から始めるシニアマーケティング』
企業プロフィール:神開 隆一(公式)
X:@t_jingai

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