コラム

通販PDCA

2020.09.20
通販支援

はじめに

ここ最近の通販業界は、ヤフーのZOZO買収や、楽天の送料無料問題など、何かと話題が多く、激動の時代に突入していると言えます。さらに、この度の新型コロナ禍による外出自粛の影響で、今や通販は生活の中で欠かすことのできない社会インフラの一つと見なされるようにもなっています。 しかし、一口に通販業界と言ってもその顔触れは実にさまざま。従来からの通販会社に加えて、メーカー、百貨店やスーパーなどの小売、卸売など、多様な業態からの新規参入が後を絶ちません。事業規模もまちまちで、超大手メーカーや総合商社から、マンションの一室で運営をしている個人事業主まで、多様なプレーヤーが一攫千金の鉱脈を求めて名乗りを上げています。 しかし、参入障壁が低く、誰もが平等にチャンスを享受できる分、それだけ競争も苛烈になり、残念ながらその多くは、夢見たような成功をつかめないまま、撤退や事業の見直しを余儀なくされています。 いったい何が明暗を分けているのでしょう?  それは通販ビジネスに不可欠な「基本」を守っているかどうか、この一点に尽きると僕は考えています。 基本すら知らずに参入している通販事業者も、実は少なくありません。 本書ではこの通販の「基本」を、さらにビジネスの基本にまで立ち返り、「PDCA」に即して説明していきます。  まず“P(=Plan)”では、通販で成功するための事業計画について説明します。 次に“D(=Do)”では、商品開発から新規顧客の獲得法までを伝授。 そして、”C(=Check)”では、”D”の結果を踏まえ、費用対効果を上げる勝ちパターンを探り、さらに獲得した顧客をリピーターに転換するための施策について説明します。 最後の”A(=Action)”は、以上の考察を基に、組織としてより強化していく方法について考えていきます。  本書に記したことはすべて、僕自身が通販会社の一員として経験したことや、クライアントの通販企業様としっかりパートナーシップを組んだコンサルティングを通して実践してきたことです。僕がこの三〇数年をかけ、身をもって検証してきたすべてを、惜しみなくここに披露しています。通販に携わる方、あるいは新規事業として、起業家として、これから通販を始めようとされている方は、ぜひこの「通販PDCA」をマスターし、大きな成功を掴んでいただきたい。

通販事業計画

すべてのビジネスは計画から始まります。当てずっぽうに賭けに出て、うまくいったなんてことも、僕自身、長くやっている中で一度か二度はありましたが、そんなことが癖にでもなれば、遅かれ早かれ痛い目にあうことは必至――。特に通販においては、対面営業で有効とされる経験や勘頼りの属人化したスキルがあまり効果をなさないとされており、その分、ロジックと客観的なデータ検証に裏打ちされた計画性が、他の業態に比べても重視される傾向にあります。 ビジネスの計画をたてる際には、まずそのビジネスモデルにおける利益構造を正しく理解しておくことが肝要です。そこで、まず「通販」とはどういう利益構造下にあるビジネスなのかを見ておきたいと思います。図1・1をご覧ください。

 

図1.1 通販ビジネスの利益構造

 

図1・1は、通販ビジネスにおける利益構造を示したものです。企業にとっての利益とは、最も原理的に言えば、「①総固定費を下げる」、「②総変動費を下げる」、「③総売上を上げる」以上三点のマネージメントの成果であり、これは通販に関わらず、すべてのビジネスに共通するものだと言えます。 通販に特有なのは図中の矢印の下に記した部分です。事業計画を立てるに当たって検討されるのもこの部分になります。そこで、ここでは、①から③までの内容について、順を追って確認し、その計画立案のポイントをご説明したいと思います。 まずは、「①総固定費を下げる」についてみていきましょう。

システム開発とランニングコスト

 

誰でも簡単にすぐに始められそうなビジネスとして通信販売を思いつきます。しかし、意外と知られていないのが、商品や広告以外にも初期投資が必要なのです。それは通信販売の基幹システムとランニングコストです。その費用についてお話ししたいと思います。 この初期投資は、事業が継続できるかどうか?を左右するほど重要な費用なのです。通信販売を行う上で、大まかに言いますと商品開発、広告、受注、出荷、顧客管理、入金管理という業務が発生します。 そのうちどうしてもかかる費用である固定費で多くの企業がここにコストをかけすぎて失敗し、撤退しまうのです。 その固定費の中で最も注意しなければいけないのが基幹システムの経費です。受注・顧客情報処理、在庫管理・発送処理、販促・顧客分析、売上・入金管理などをおこなうシステムの費用です。もちろん件数が少なければ顧客台帳を1件ずつ手書きでもいいでしょう。 しかし、100件1000件さらには数万件になってしまうと、手書きでは効率的でなく、実際無理ですよね。 日々の業務をスムーズに行うには、最初から基幹システムである顧客管理ソフトを導入しておきましょう。

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